特別展

 

「古代メキシコ ー マヤ、アステカ、テオティワカン」

 

2024年2月6日(火)〜5月6日(月・振休)

 

メキシコには35もの世界遺産があり、なかでも高い人気を誇るのが、古代都市の遺跡群です。前15世紀から後16世紀のスペイン侵攻までの3千年以上にわたり、多様な環境に適用しながら、独自の文明が花開きました。本展では、そのうち「マヤ」「アステカ」「テオティワカン」という代表的な3つの文化の焦点をあてます。

 

前1200年頃から広範な地域に栄え、暦や文字など高度な知識を有する王や貴族が中心となって、交易と戦争を繰り広げたマヤ文明。1325年に首都テノチチィトラン(現メキシコシティ)を築き、軍事力と貢納制度を背景に繁栄を謳歌したアステカ文明。前1世紀から後6世紀まで、メキシコ中央高原に栄え、「太陽のピラミッド」「月のピラミッド」「羽毛の蛇ピラミッド」を擁する巨大な計画都市を築いたテオティワカン文明。

 

火山の噴火や地震、干ばつなど厳しい自然環境のなか、人々は神を信仰し時に畏怖しながら、王と王妃の墓、大神殿、三大ピラミッドなど各文明を代表する壮大なモニュメントを築きました。本展では、普遍的な神と自然への祈り、そして多様な環境から生み出された独自の世界観と造形美を通して、古代メキシコ文明の奥深さと魅力に迫ります。

 

国立国際美術館 

 

 

 

 

【みどころ】

 

1.マヤの「赤の女王(レイナ・ロハ)」、奇跡の初来日

 

マヤの代表的な都市国家パレンケの黄金時代を築いたパカル王の妃とされるのが、赤い辰砂(しんしゃ)に覆われて見つかった通称「赤の女王」(スペイン語で「レイナ・ロハ」)です。その墓の出土品を、メキシコ国内とアメリカ以外で初めて公開します。パカル王の息子と孫、ひ孫に関連する遺物もあわせ、200年にわたる王朝一族の物語を浮き彫りにします。

 

 

 

2.古代メキシコの至宝約140件が一挙に集結

 

考古と民族資料の宝庫であるメキシコ国立人類学博物館をはじめ、アルベルト・ルス・ルイリエ  パレンケ遺跡博物館、テンプロ・マヨール博物館、テオティワカン考古学ゾーンなど、メキシコ国内の主要博物館から厳選した約140件を、近年の発掘調査の成果を交えてご紹介します。

 

 

3.世界遺産の魅力を体感できる展示空間

 

 

パレンケのパカル王と王妃(赤の女王)の墓、アステカの大神殿(テンプロ・マヨール)、テオティワカンの三大ピラミッドなど、メキシコが世界に誇る古代都市遺跡の魅力を、映像や臨場感あふれる再現展示で存分にお伝えします。

 

 

 


 

 

第一章 古代メキシコへのいざない

 

前1500年頃、メキシコ湾岸部に興ったオルメカ文明は、メソアメリカで展開する多彩な文明のルーツともいわれます。広大な自然環境のなかで人々の暮らしを支えたのは、トウモロコシをはじめとする栽培植物と野生の動植物でした。やがて、天体観測に基づく正確な暦が生み出され、豊穣と災害をもたらす神々への祈りや畏れから様々な儀礼が発達し、生贄が捧げられました。本章では、オルメカ文明の象徴的な一作品を紹介するとともに、「マヤ」「アステカ」「テオティワカン」に通底する4つのキーワードを解説します。

 

 

⦅4つのキーワード⦆

 

1⃣ トウモロコシ

トウガラシやトマトなどと並び、新大陸を代表する栽培植物。その起源は、前7000年頃にさかのぼります。長期間にわたる遺伝的変化を経て主食になると、政治や宗教においても重要な意味をもちました。人間はトウモロコシからつくられたという創世神話もあるほどです。

 

2⃣ 天体と暦

農業には雨季と乾季の予測が重要で、人々は熱心に天体の観測を行っていました。太陽、月、金星、そして日食や月食の周期を正確に把握し、365日の太陽暦や260日の宗教暦など、様々な暦を生み出しました。

 

3⃣ 球技

オルメカ文明以前から現代に至るまで、ゴムボールを使った多様なゲームが専用の球技場で行われてきました。人身供犠を伴う宗教儀礼、外交使節を迎えての儀式、賭けの対象ともなるスポーツや娯楽など、球技には多くの意味合いがあります。

 

4⃣ 人身供犠

太陽、月、トウモロコシ、人間 …… 古代メキシコの世界観では、あらゆる生命体は、神々の働きと犠牲により存在します。それ故、自然界の動植物、そして人間も、世界の存続のため自ら身を捧げました。残酷にもみえる儀礼は、こうした利他精神に支えられていたのです。

 

 

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第二章 テオティワカン 神々の都

 

テオティワカンは海抜2,300mのメキシコ中央高原にある都市遺跡です。死者の大通りと呼ばれる巨大空間を中心にピラミッドや儀礼の場、官僚の施設、居住域などが整然と建ち並んでいました。太陽や月のピラミッドはまさに象徴的な存在です。スペイン侵攻以前から話されていたナワトル語で「神々の座所」を意味するテオティワカンは、当時の民族や言語も未解明な謎の多い文明ですが、美術や建築様式はその後も継承されます。本章では、近年の発掘調査や研究成果をもとに、巨大な計画都市の全貌を明らかにします。

 

死のディスク石彫 テオティワカン文明、300~550年 テオティワカン、太陽のピラミッド、太陽の広場出土 メキシコ国立人類学博物館蔵 ©Secretaría de Cultura-INAH-MEX. Archivo Digital de las Colecciones del Museo Nacional de Antropología. INAH-CANON
死のディスク石彫 テオティワカン文明、300~550年 テオティワカン、太陽のピラミッド、太陽の広場出土 メキシコ国立人類学博物館蔵 ©Secretaría de Cultura-INAH-MEX. Archivo Digital de las Colecciones del Museo Nacional de Antropología. INAH-CANON

嵐の神の壁画 テオティワカン文明、350~550年 テオティワカン、サクアラ出土 メキシコ国立人類学博物館蔵 ©Secretaría de Cultura-INAH-MEX. Archivo Digital de las Colecciones del Museo Nacional de Antropología. INAH-CANON
嵐の神の壁画 テオティワカン文明、350~550年 テオティワカン、サクアラ出土 メキシコ国立人類学博物館蔵 ©Secretaría de Cultura-INAH-MEX. Archivo Digital de las Colecciones del Museo Nacional de Antropología. INAH-CANON

テオティワカンでは、集合式住宅群や公共建造物、あるいは儀礼施設に色彩豊かな壁画が数多く描かれ、都市空間を彩っていました。

 

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第三章 マヤ 都市国家の興亡

 

マヤは前1200年頃から後16世紀までメソアメリカ一帯で栄えた文明であり、後1世紀頃には王朝が成立しました。都市間の交易や交流、時には戦争を通じて大きなネットワーク社会を形成しました。王や貴族はピラミッドなどの公共建築や集団祭祀、精緻な暦などに特徴を持つ力強い世界観を有する王朝文化を発展させました。本章では、マヤの文化的発展と王朝史に注目します。特に王朝美術の傑作と名が高い、「赤の女王のマスク」をはじめとする王妃の墓の出土品を本邦初公開します。

チャクモール像 マヤ文明、900~1100年 チチェン・イツァ、ツォンパントリ出土 ユカタン地方人類学博物館 カントン宮殿蔵 ©Secretaría de Cultura-INAH-MEX
チャクモール像 マヤ文明、900~1100年 チチェン・イツァ、ツォンパントリ出土 ユカタン地方人類学博物館 カントン宮殿蔵 ©Secretaría de Cultura-INAH-MEX

後古典期のチチェン・イツァやトゥーラで多く見つかる彫像で、アステカにも受け継がれました。腹の部分が皿のようになっており、供物や時には生贄の心臓が捧げられることもあったとみられます。

 

赤の女王のマスク・冠・首飾り マヤ文明、7世紀後半 パレンケ、13号神殿出土 アルベルト・ルス・ルイリエ  パレンケ遺跡博物館蔵  ©Secretaría de Cultura-INAH-MEX.  Foto: Michel Zabé
赤の女王のマスク・冠・首飾り マヤ文明、7世紀後半 パレンケ、13号神殿出土 アルベルト・ルス・ルイリエ パレンケ遺跡博物館蔵 ©Secretaría de Cultura-INAH-MEX. Foto: Michel Zabé

パレンケ13号神殿で、真っ赤な辰砂(水銀朱)に覆われて埋葬されていた「赤の女王」。このマスクをはじめてする品々を身に着けていた墓の主は、パカル王妃であった可能性が指摘されています。

 


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第四章 アステカ テノチティトランの大神殿

 

アステカは14世紀から16世紀にメキシコ中央部に築かれた文明です。首都テノチティトラン(現メキシコシティ)は湖上の都市であり、中央に建てられたテンプロ・マヨールと呼ばれる大神殿にはウィツィロポチトリ神とトラロク神が祀られていました。アステカも他の文明の伝統を継承し、王や貴族などを中心とする支配者層によって他の地域との儀礼や交易、戦争が行なわれました。本章ではアステカの優れた彫刻作品とともに、近年テンプロ・マヨールから発見された金製品の数々をご紹介します。

 

鷲の戦士像 アステカ文明、1469~86年 テンプロ・マヨール、鷲の家出土 テンプロ・マヨール博物館蔵 ©Secretaría de Cultura-INAH-MEX. Museo del Templo Mayor
鷲の戦士像 アステカ文明、1469~86年 テンプロ・マヨール、鷲の家出土 テンプロ・マヨール博物館蔵 ©Secretaría de Cultura-INAH-MEX. Museo del Templo Mayor

テンプロ・マヨールの北側、鷲の家で見つかった等身大とみられる戦士の像。王直属の「鷲の軍団」を構成した高位の戦士、もしくは戦場で英雄的な死を遂げ鳥に変身した戦士の魂を表しているといわれます。

 

トラロク神の壺 アステカ文明、1440~69年 テンプロ・マヨール、埋納石室56出土 テンプロ・マヨール博物館蔵 ©Secretaría de Cultura-INAH-MEX. Museo del Templo Mayor
トラロク神の壺 アステカ文明、1440~69年 テンプロ・マヨール、埋納石室56出土 テンプロ・マヨール博物館蔵 ©Secretaría de Cultura-INAH-MEX. Museo del Templo Mayor

雨の神であるトラロクはメソアメリカで最も重要視され、多くの祈りや供え物、生贄が捧げられた神です。水を貯えるための壺にトラロク神の装飾を施すことで、雨と豊穣を祈願しました。

 


 

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【展示会概要】

 

展覧会名: 特別展「古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン」

会  期: 2024 年 2月 6 日(火)~ 5月 6日(月・振休)

開館時間: 10:00~17:00 金曜・土曜は20:00まで ※入場は閉館の 30分前まで

休館日 : 月曜日 ※2月12日(月・振休)、4月29日(月・祝)、5月6日(月・振休)は開館、2月13日(火)は休館

観覧料 :一般 2,100円(1,900円)  大学生 1,300円(1,100円)   高校生 900円(700円)

  ( )は前売・団体料金。団体は 20 名様以上。団体鑑賞をご希望の場合は 1 か月前までにご連絡ください。

   ※前売券は、2月5日(月)まで販売

   ※中学生以下無料(要証明) ※大学生・高校生の方は証明できるものをご提示ください。

   ※心身に障がいのある方とその付添者1名無料(要証明)

   ※本料金で同時開催のコレクション展もご覧いただけます。

主  催:国立国際美術館、NHK大阪放送局、NHKエンタープライズ近畿、朝日新聞社

共  賛:NISSHA

協  力:アエロメヒコ航空、ダイキン工業現代美術振興財団

後  援:メキシコ大使館

企画協力: メキシコ文化省、メキシコ国立人類学歴史研究所

展覧会公式サイト:https://mexico2023.exhibit.jp/

展覧会公式X(旧 Twitter):@mexico2023_24 

〚国立国際美術館〛

 

  〒530‐0005 大阪府大阪市北区中之島4‐2‐55

   TEL:06-6447-4680(代表)

   国立国際美術館 HP:https://www.nmao.go.jp/

   国立国際美術館公式X(旧 Twitter)@nmao.jp