特別展 「日本、美のるつぼ
ー 異文化交流の軌跡 ー」
2025年4月19日(土)~6月15日(日)
交流をテーマに日本の美術をとらえなおす特別展「日本、美のるつぼー異文化交流の軌跡ー」が開催されます。
大阪・関西万博は、持続可能な社会を、国際社会の共創によって推し進めると謳っています。日本の古美術は閉鎖的で変化に乏しいと見られがちですが、実際は古今東西の芸術文化が混じり合いダイナミックに形づくられてきました。現代に伝わる名品も、海外交流のなかで産み出されたものが少なくありません。大陸から日本列島にわたった技術や製品は、憧れとともに受容され、ときには誤解を伴った模倣や改造を加えられながら後世に継承されました。弥生、古墳時代の美しい青銅器や金工品、古代や中世の仏教芸術、漢字や水墨画、精巧な工芸品などがすぐに思い浮かびます。逆に、日本では大衆的な商品にすぎなかった浮世絵が海外で評価され、今では日本美術の代表格となっていますし、伊万里焼や輸出漆器のように異国の商人との共同作業によって創り出され、日本の顔として世界各地で愛されてきた美術品もあります。
世界中から最新技術が集まるこの機会に、交流の軌跡をたどり、日本美術の底力を再発見します。
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〚見どころ〛
1. 交流を軸にとらえなおすと見えてくる、あの名品の新たな横顔
日本美術史が編まれ、国の文化財保護法令ができたのは、19世紀末、欧米の万国博覧会が華やかなりしころでした。世界から見られていた、輸出工芸を中心とする日本美術のイメージに対し、世界に立派に見られたいという一心で、日本の独自性を強調した官製の日本美術史も整います。国宝や国立博物館はまさにこの枠組みを受け継ぐものですが、私たちに伝えられた品のひとつひとつは、じつは様々な文化がるつぼの中で溶け合うことで生まれた果実であることを、静かに語っています。世界に見られた日本美術、世界に見せたかった日本美術、世界と混じり合った日本の美術という視点の冒険を、名品を通して体験しましょう。
2.出展総数約200件、巡回なしの京都限定開催
国宝16件、重文50件を含む約200件の作品を通じて、日本美術の多様性に出会いましょう。
※出展件数は5月24日現在のものです。
今後、国宝、重要文化財を含めた出展件数は増減する可能性があります。
= 「るつぼ」って? =
もとは、金属を溶かしたり化学実験をしたりするために、物質を高温で熱するのに用いる耐熱性の容器。転じて、種々のものが混合、融合することをたとえていいます。本展では、日本列島にもたらされた様々な異文化が混ざり合い、美しい品々を生み出してきた歴史を「日本、美のるつぼ」と題し、その旅を楽しみます。
= 官製の日本美術史 =
明治33年(1900)のパリ万国博覧会への参加を契機に、明治政府は日本初の日本美術史を編纂しました。フランス語で刊行されたその『Histoire de I'Art du Japon』は、世界に見せたかった日本美術を発信しました。翌年、和文でも刊行された『稿本日本帝国美術略史』は、いわば政府公式の美術史として、現代の私たちが認識する日本美術史の原型となりました。
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世界に見られた日本美術
富嶽三十六景 神奈川沖浪裏、凱風快晴、山下白雨
葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵
ゴッホが激賞し、ドビュッシーの交響曲からクローデルの彫刻にまで波及した「ビッグ・ウェーブ」こと「神奈川沖浪裏」は、今日にいたるまで北斎のアイコンであり続けています。19世紀後半、ジャポニスムの隆盛にともない西欧において不滅のものとなった北斎の名声は、近代日本における北斎評価にも多大な影響を及ぼしました。
世界に見せたかった日本美術
重要文化財
突線紐五式銅鐸 滋賀県野洲市小篠原字大岩山出土
弥生時代 1~3世紀 東京国立博物館所蔵
高さ134.7㎝、重さ45.5㎏と、現存する日本最大の銅鐸です。吊り手は幅広で、飾り耳とよばれる装飾がついており、吊り下げて鳴らす鐘としての機能を失い、据え置いて見る銅鐸へと変容していることがわかります。本品は銅鐸のなかでも最終段階のものであり、『Histoire de I'Art du Japon』には日本の初期美術における金工の代表例のひとつとして掲載されています。
重要美術品
埴輪 鍬を担ぐ男子
伝群馬県太田市脇屋町出土
古墳時代 6世紀 京都国立博物館所蔵
本品は、埴輪の男子像で、髪を美豆良(みづら)に結い、帽子・首飾りを着け、左腰に太刀を佩き、右手で鍬を担いでいます。髪型や持ち物の特徴から中間的な階層の人物とみられ、農作業を指揮する役割の人物である可能性があります。
地蔵菩薩像
鎌倉時代 14世紀 東京国立博物館所蔵
明治33年(1900)のパリ万博を機に国家事業として編纂された『Histoire de I'Art du Japon』の鎌倉時代の絵画の章で図版に取り上げられている4点のうちの1点で、木版画にされていることから、鎌倉時代を代表する名品として扱われたことが知られます。
国宝 風神雷神図屏風 俵屋宗達筆 江戸時代 17世紀 京都・建仁寺所蔵
今や誰もが知る国宝ながら、江戸時代における消息は定かでなく、本作の存在が広く知られるようになったのは明治時代後半になってからのことです。先んじて西欧で高く評価されていた尾形光琳、そして酒井抱一へと連なる琳派概念の形成は、近代国民国家として歩み始めた日本が必要とした「伝統の創出」でもありました。
世界と混じり合った日本の美術
重要文化財
三彩釉骨臓器(さんさいゆうこつぞうき)
和歌山県橋本市名古曽古墓出土
奈良時代 8世紀 京都国立博物館所蔵
奈良時代に唐三彩の技術をもって日本国内で生産された奈良三彩の代表例です。透明釉(白釉)と緑釉、褐釉の3色の釉が織りなす斑点状の文様は唐三彩の施釉技法であり、その一方で、器形は日本の須恵器にある薬壺形をしています。中国・唐の技術を積極的に導入しつつも、日本での用途や好みに合わせて柔軟に改変している様子がうかがえます。
国宝
宝相華迦陵頻伽蒔絵𡑮冊子箱(ほうそうげかりょうびんがまきえそくさっしばこ)
平安時代 延喜19年(919) 京都・仁和寺所蔵
空海が唐から持ち帰ったお経を納める箱、と、蓋に蒔絵で書かれています。空海の死後、散逸の危機にあったこの貴重な経典を、時の天皇、醍醐天皇が集めさせて箱に収めたとの記録があります。文様の配置は、唐の影響が濃厚な正倉院宝物のように、求心的で整然としている一方で、極楽浄土で仏法を囀(さえず)るという霊鳥、迦陵頻伽のひとりひとりは、和風の顔立ちで、踊ったり楽器を奏でたり、全員がちがう姿をしています。
重要文化財
宝誌和尚立像(ほうしおしょうりゅうぞう)
平安時代 11世紀 京都・西住寺所蔵
宝誌和尚は中国南北朝時代の僧で、予言や神異を行い、観音の化身として信じられました。この不思議な造形は、面を裂き観音の姿をあらわしたという説話に基づくものです。宝誌の姿は奈良時代に中国から伝わったと考えられ、本像は日本で現存唯一の作例です。
国宝 華厳宗祖師絵伝 義湘絵(部分) 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺所蔵
新羅の華厳宗の僧・義湘(625~702)が唐へ留学したとき美女・善妙より献身を受けた説話を、伸び伸びとした筆致で描いた国宝絵巻。舞台が異国であるため、輸入された中国の絵画を参考にして作画されており、とくに宋の「帰去来図巻」からの引用が明らかです。
青磁輪花茶碗 銘 鎹(かすがい)
中国 南宋時代 13世紀 愛知・マスプロ美術館所蔵
口縁から胴部にかけてひび割れた部分を鎹で止め、口縁部には金継ぎを施した青磁輪花碗です。割れて修理されたことを欠点とせず、むしろこの茶碗の見どころとしてあらたな価値を見いだし、長所としていることも本作の大きな魅力です。あえて完璧さを求めない、日本独特の感性といえるでしょう。
重要文化財
鳥獣文様綴織陣羽織 豊臣秀吉所用
桃山時代 16世紀 京都・高台寺所蔵
豊臣秀吉の正妻おね/ねねゆかりの高台寺に伝来した秀吉所用の陣羽織です。孔雀や鹿、闘う動物や獣の頭部などが多彩な綴織であらわされています。特殊な金属糸の使用から、サファヴィー朝ペルシアの宮廷工房で製作された室内装飾品であったと考えられます。大航海時代の南蛮船によりもたらされ、武将の陣羽織に転用されました。
クリス インドネシア 16~17世紀 京都・石清水八幡宮所蔵
クリスとは、現在のインドネシア周辺の島しょ部とマレー半島にかかる地域で広く用いられてきた伝統的な短剣。本品は、日本にいつどのようにもたらされたのか不明ですが、石清水八幡宮にて宝珠など、雨乞いの修法に関連した品とともに発見されました。蛇行する形状から発想を得て、雨乞いに用いられた可能性が想定されます。
楼閣山水蒔絵水注(ろうかくさんすいまきえすいちゅう)
江戸時代 18世紀 京都国立博物館所蔵
アラブ世界の金属製の香油瓶や水注に原型があり、中国において銅器や磁器で写された品を、日本で木製で作らせ、漆を塗り、金銀粉で装飾させた18世紀の輸出工芸。類品が、フランスのルイ15世の寵姫、ポンパドゥール侯爵夫人の愛蔵品にあり、後にパリで金属装飾を加えられてルイ16世の妃、マリー・アントワネットに納められ、現在はルーブル美術館に伝わります。
十八羅漢坐像のうち羅怙羅(らごら)尊者像 范道生作
江戸時代 寛文4年(1664) 京都・萬福寺所蔵
中国人仏師・范道生の代表作。范道生は黄檗宗の開祖・隠元禅師によって宇治の萬福寺に招かれ、仏像の制作を行いました。京都仏師もその造像を手伝い、范道生の作風は同時代の日本の仏師に影響を与え、黄檗様と呼ばれる新しい様式が生み出されました。羅怙羅は出家前の釈迦の子で、自分の中に仏がいるのだと胸を開いて見せています。
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〚開催概要〛
展覧会名:特別展「日本、美のるつぼー異文化交流の軌跡ー」
会 期:2025年(令和7)4月19日(土)~6月15日(日) ※会期中展示替があります
会 場:京都国立博物館 平成知新館(〒605‐0931 京都市東山区茶屋町527)
主 催:京都国立博物館、朝日新聞社、NHK京都放送局、NHKエンタープライズ近畿
協 賛:NISSHA
お問い合わせ:075‐525‐2473(テレホンサービス)
京都国立博物館公式HP:https://www.kyohaku.go.jp/
※開館時間、休館日、観覧料、展示期間等の情報は確定次第展覧会公式サイト等でお知らせします。
当ホームページにてもお知らせします。
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〚関連情報〛
俵屋宗達の国宝「風神雷神図屏風」、初めてのフィギュア化が決定!
本展開催を記念して、会期中に限り数量限定で販売いたします。
※数量、販売価格については後日改めて発表します。
可動フィギュアやカプセルフィギュア、さらにはこの俵屋宗達の作を模写した「尾形光琳筆 風神雷神図屏風」など、これまでにも数多く「風神雷神」を立体化してきた海洋堂が、最新アップデートとして挑んだ国宝「風神雷神図屏風」展覧会限定フィギュア。
日本画の真髄と進化した立体造形のコラボレーションをお手元でお楽しみください。