超 国宝-祈りのかがやきー
2025年4月19日(土)~6月15日(日)
仏教文化の聖地奈良に根をおろし、仏教・神道美術に特化した博物館として文化財を守り伝えてきた奈良国立博物館(奈良博)は、令和7年(2025)、開館130年の記念すべき年に開館以来はじめての「国宝展」を開催します。
わが国における博物館の成立背景に、国の近代化と各地で開かれた博覧会が大きく関係していることをご存じでしょうか。明治維新の急激な社会変動の中、仏像をはじめとする多くの文化財が散逸する危機に瀕しました。長らく仏教文化の中心地であった奈良での影響は著しく、この様子を憂いた人々を中心に明治8年(1875)から18回にわたり「奈良博覧会」が開催されました。東大寺を会場として、数多くの文化財が公開され、当時多くの人々が訪れたといいます。
こうした博覧会開催を経て、文化財の保護と展示の重要性が広く認知され、明治28年(1895)4月29日に奈良博(当時は帝国奈良博物館)は誕生しました。その2年後の明治30年(1897)には、今日の文化財保護法のもとになった「古寺社保存法」が制定され、その中で初めて「国宝」という言葉が登場します。そして、奈良博は多くの国宝とともに、その歴史を歩んできたのです。
この度の展覧会は、奈良博設立の契機となった奈良展覧会からはじまり、開館後に奈良博に陳列されてきた南都の大寺の名品や、これまでに企画してきた展覧会のハイライトともいうべき名宝を一堂に会し、奈良博130年の歴史をたどるものです。「超 国宝」という展覧会タイトルには、選りすぐりの名品という意味だけに留まらず、先人たちから受け継いだ文化の灯を〈時代を超えて〉つないでいくという、同館の思いが込められています。この機会に多くの方にご来館いただきたいと思います。
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【みどころ】
1.初めての「国宝展」
開館130周年を記念し、奈良国立博物館は特別展のテーマとして、初めて「国宝」を掲げます。奈良や奈良博にゆかりの深い社寺のご協力のもとに開催する、奈良博ならではの国宝展、どうぞご期待ください。
2.仏教・神道美術 100%
奈良国立博物館は仏教美術を専門とする博物館として、彫刻、絵画、書跡、工芸、考古や情報、保存など各分野の研究員が所属し、文化財の保存・研究・公開を行っています。本展では仏像や神像、仏画、経典、仏具など、各分野の研究員に選りすぐられた仏教・神道美術 100%の国宝、そして関連の文化財のみを展観します。いのりが込められた、唯一無二の至宝の数々をご堪能ください。
= 国宝の聖地・奈良 = キーワードは《奈良》
2024年5月1日現在、国宝全1,137件の内訳は、美術工芸品906件、建造物231件。そのうち、奈良県では東京、京都に次いで全国で3番目に多い18.1%にあたる、206件の国宝が指定されています。なかでも、彫刻は76件で全国の54.3%、建造物は64件で27.7%を占めます。
奈良国立博物館の位置する奈良公園周辺だけでも、東大寺、興福寺、春日大社、新薬師寺、元興寺、正倉院など国宝に指定される建造物が19件あり、現地でしか拝観できない彫刻の国宝も多数あります。
万博イヤーに、ぜひ奈良へ。展覧会とあわせて、奈良の町を歩き、古い社寺を巡れば、まさに「国際博覧会(万博の正式名称)」ならぬ「国宝博覧会」です。
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【出陳品紹介 彫刻】
菩薩半跏像(伝如意輪観音) 1軀
木造 彩色 像高(坐高)87.0㎝
飛鳥時代 7世紀 奈良 中宮寺
昭和26年(1951)6月9日指定
左足を踏み下げ右手の指を頬に当て、衆生を救済するために思惟する「半跏思惟」のすがたをとります。像全体が円錐形に収まるような形の構成や、肩に掛かる垂髪や衣のひだのパターン化された表現は、飛鳥時代前期の特徴です。一方で微笑みを浮かべた顔立ちや円みを帯びた肉付けには写実味があります。柔和さと威厳を兼ね備えた飛鳥時代仏教彫刻を代表する傑作のひとつです。
展示期間 5月20日~6月15日
観音菩薩立像(百済観音)
木造 彩色 像高209.4㎝
飛鳥時代 7世紀 奈良 法隆寺
昭和26年(1951)6月9日指定
飛鳥時代仏教彫刻を代表する傑作のひとつ。クスノキの一木造で、華麗な文様が施された光背や装身具、台座も制作当初のものです。ほっそりして伸びやかなすがたが特徴で、面長で彫りの浅い愛らしい顔や、絵画的な衣のひだ、細身ながらも柔らかみのある肉身の表現など、他の仏像に見られない個性的な造形が魅力です。
菩薩半跏像 1軀
木造 像高(坐高)88.2㎝
平安時代(8~9世紀)
京都 宝菩提院願徳寺
昭和32年(1957)2月19日指定
本体・台座を含む大部分を一材から彫り出す。堂々とした等身大の一木彫像です。強いまなざしの異国的な風貌や、複雑にうねる衣のひだの動感ある表現は独特です。木彫の持つ硬質な表現と同時に肉身や衣のやわらかみも的確に表現されており、奈良時代末から平安時代初期の木彫像の中でも傑出した名品です。
大日如来坐像 運慶作 1軀
木造 漆箔 像高98.8㎝
平安時代 安元2年(1176)
奈良 圓成寺
平成5年(1993)6月10日指定
日本で最も有名な仏師運慶(?~1223)の現存する最も早い作例として知られています。胸を張り背筋を伸ばした姿勢や引き締まった腰、玉眼を用いたみずみずしい表情など、平安時代に好まれた温和な仏像とは異なる、鎌倉時代の仏像様式を先取りした迫真的な表現が見られます。若き日の運慶の卓越した造形力を見ることが出来る逸品です。
【出陳品紹介 絵画】
吉祥天像
麻布著色 縦53.0㎝ 横31.7㎝
奈良時代(8世紀) 奈良 薬師寺
昭和26年(1951)6月9日指定
五穀豊穣の神・吉祥天の華麗な姿を描く天平仏画の名品。鳥毛立女屏風(正倉院宝物)の女性像にもよく似たふくよかでみずみずしい顔立ちは、中国唐時代に流行した美人画の伝統を受け継ぐものです。吉祥天を本尊とする仏教儀式が薬師寺で始まった奈良時代、宝亀3(772)年頃に制作されたと考えられています。
信貴山縁起絵巻 尼公巻
紙本著色 縦31.4㎝ 長1423.0㎝
平安時代(12世紀) 奈良 朝護孫子寺
昭和26年(1951)6月9日指定
日本三大絵巻の一つに数えられるやまと絵の最高峰。奈良・信貴山朝護孫子寺を開いた命蓮上人にまつわる奇跡の物語を描くもので、躍動感あふれる人物描写や、場面がつぎつぎと連続する構成はまるでアニメーションを見るかのよう。「尼公巻」は、姉の尼公が東大寺大仏のお告げにより弟命蓮との再会を果たすという感動の物語が展開します。
辟邪絵 天刑星
絹本著色 縦26.0㎝ 横39.2㎝
平安~鎌倉時代(12世紀) 奈良国立博物館
昭和60年(1985)6月6日指定
疫病や災いを引きおこす鬼とたたかう神々を描いた平安絵巻の傑作。鬼を酢に漬けて食い疫病を退散させる「天刑星」、朝に3,000、夕に300の鬼を食らう大食漢の「神虫」、仏法を邪魔する鬼を矢で射る「毘沙門天」等々。平和を守るヒーローたちの勇ましくもユーモラスな姿は、現代のわれわれにも訴えるものがあります。
【出陳品紹介 書跡・工芸・考古】
刺繍 釈迦如来説法図
絹製 刺繍 縦211.0㎝ 横160.4㎝
中国・唐または飛鳥時代(7世紀)
奈良国立博物館
昭和27年(1952)11月22日指定
堂々たる姿の如来像を中心に多数の尊像を表わした古代刺繍工芸の最高傑作。右肩を肌脱いだ如来が豪華な背もたれを伴う宝座に座る姿は玄奘三蔵がインドからもたらした図像です、唐の宮廷工房で製作されたと考えられる一方、法隆寺金堂壁画ととても近い表現が見られ、わが国の飛鳥時代に作られたという説もあります。
金光明最勝王経(国分寺経)
紫紙金字(巻第1) 縦26.3㎝ 長764.9㎝
奈良時代(8世紀) 奈良国立博物館
昭和27年(1952)3月29日指定
金光明最勝王経は、王がこの経を敬えば国が護られると説く、護国経典です。天平13年(741)、聖武天皇は各国に国分寺の建立を命じ、塔に金字の金光明最勝王経を安置することも定めました。本品はこれに従い書写されたもので、紫紙に金泥で経典が書写されています。金字は猪の牙で磨かれたと考えられ、今なお輝きを放っています。
金亀舎利塔
銅鋳造・鍛造 鍍金 高92.0cm
平安~鎌倉時代(12~13世紀)
奈良 唐招提寺
昭和34年(1959)6月27日指定
唐僧・鑑真が日本に伝えた舎利を祀るための舎利容器。亀に宝塔がのる形は、鑑真が渡航時に海中に落とした舎利を救ったという金亀の説話や、密教の教義にちなむとされます。精緻に表された塔の軒裏の組み物や透彫りの唐草文様に高度な金工技術が示され、透彫り文様を通して舎利を見せる巧みな演出とも相まって、舎利荘厳美術の傑作に数えられます。
七支刀
鉄製 長74.9㎝
古墳時代(4世紀)
奈良石上神宮
昭和28年(1953)11月14日指定
左右にそれぞれ3本の枝刃を交互に作り出す、唯一無二の形状の剣。両面に計61文字の漢字が金で象嵌されています。冒頭の2文字は中国の年号とみられ(西暦369年説が有力)、その年に朝鮮半島・百済の王が倭王のために作ったことが記されます。古代日本をめぐる国際関係を垣間見ることのできる超一級の名品です。
【開催概要】
展覧会名:奈良国立博物館開館130年記念特別展「超 国宝ー祈りのかがやきー」
会 期:2025年4月19日(土)~6月15日(日)
会 場:奈良国立博物館 東・西新館(〒630-8213 奈良市登大路町50番地)
主 催:奈良国立博物館、朝日新聞社、NHK奈良放送局、NHKエンタープライズ近畿
協 賛:NISSHA
特別支援:DMG 森精機
お問合せ:050-5542-8600(ハローダイヤル)
奈良国立博物館公式サイト:https://www.narahaku.go.jp/
※開館時間、休館日、観覧料、展示期間等の情報は確定次第展覧会公式サイト、また当サイト等でお知らせいたします。