東山魁夷と風景画の旅 -日本から世界へ -

 

2025年2月1日(土)~4月13日(日)

 

福田美術館

 

 

 福田美術館では2025年2月より、東山魁夷(1908~1999)を中心に、日本と西洋の風景画を紹介する企画展が開催されます。

 清らかな湖畔、新緑の輝き、燃え立つ紅葉、そして霧に包まれる雄大な山岳など、日本各地を旅して自然が織りなす景色を丹念に描き続けた魁夷の作品は、私たちに普遍的な美意識と時を超えた共感をもたらし続けてきました。また、彼がヨーロッパや中国を旅し、その目を通して描いた風景画も、独自の視点と彩りを見せています。

 本展では、福田美術館が所蔵する魁夷の名作約30点を一挙公開し、京都の修学院離宮を描いた《夕涼》や、丸山公園の祇園しだれ桜を描いた《花明り》(大和証券グループ本社蔵)などの名品も特別展示します。加えて、与謝蕪村や池大雅が憧景した中国の山水画に基づいて描く、近世の風景画から始まり、横山大観・菱田春草らが光や空気を新技法「朦朧体(もうろうたい)」で表現した近代日本画までも紹介する、風景画の歴史を辿る展覧会です。

 さらに、東山魁夷らが描く日本の風景画に併せて、19世紀フランスで活躍した西洋画家カミーユ・コローやクロード・モネの作品も展示します。彼らが紡ぎ出した印象派の光と色彩、そして魁夷の静謐な詩情が、東西の風景画を通じて響き合う美の世界に誘います。

 

 

第1章 東山魁夷へと続く、日本画と西洋画の交差点ー近代画家たちの挑戦

 

 第1章では、近世から近代にかけての日本画家たちが残した風景画を中心に、彼らが見た世界の情景に迫ります。与謝蕪村や池大雅が憧れた、中国の山水画の影響を受ける作品に続き、明治時代以降には実際に海外を旅した画家たちが、彼らの目で見た西洋の風景を描く時代が訪れます。横山大観や菱田春草は、日本画の伝統に西洋絵画の光や空気を取り入れ、輪郭線ではなくぼかしを用いた色面描写をおこなう「朦朧体」と呼ばれる独自の技法で新しい風景画を創出し、和洋折衷の美しい世界を展開しました。一方、京都では竹内栖鳳や山元春挙といった画家たちが、伝統的な日本画を継承しつつ、西洋の技法や表現を取り入れた新たな作品を生み出します。

 本章ではさらに、近代西洋画の代表画家、カミーユ・コローやクロード・モネによる作品も併せて展示します。彼らが描く光と色彩の美学と、日本画家たちの新たな表現が共鳴するさまを堪能できます。

 


菱田春草《青波舟行》(1907年) 福田美術館蔵 前期展示
菱田春草《青波舟行》(1907年) 福田美術館蔵 前期展示
竹内栖鳳《春の海》(1924年) 福田美術館蔵 通期展示
竹内栖鳳《春の海》(1924年) 福田美術館蔵 通期展示
ピエール・オーギュスト・ルノワール 《コートダジュールの松林》 (20世紀)福田美術館蔵 通期展示
ピエール・オーギュスト・ルノワール 《コートダジュールの松林》 (20世紀)福田美術館蔵 通期展示

カミーユ・コロー《孤独、ヴィジャンの想い出(リムーザン)》(1873年) 福田美術館蔵 通期展示
カミーユ・コロー《孤独、ヴィジャンの想い出(リムーザン)》(1873年) 福田美術館蔵 通期展示
クロード・モネ《プールヴィルの崖、朝》(1897年) 福田美術館蔵 通期展示
クロード・モネ《プールヴィルの崖、朝》(1897年) 福田美術館蔵 通期展示

 

 

第2章 東山魁夷 ー風景画の巨匠、その深遠なる世界へ

 

 第2章では、東山魁夷が旅をし日本と欧州の風景を描いた作品を一堂に集め、その芸術の真髄をご紹介します。

 魁夷は神奈川県横浜市に生まれ、18歳で東京美術学校に入学し、日本画を専攻しました。その後25歳でベルリンへ留学し、欧州各地を周って写生を行い、西洋の風景画から多くを学びます。帰国後しばらくして、第二次世界大戦が勃発。自身も召集され訓練中もたびたび空襲にあうなど、悲惨な戦争体験をしました。さらに終戦後、母と弟が相次いで他界し失意の底にあった魁夷ですが、それでも風景画を描き続けることによって、作品に深い精神性が宿ることになります。40代で遅咲きながら高い評価を得、やがて「国民的画家」と呼ばれるようになった彼は、90歳まで絵筆をとり続けました。

 観る者の心を浄化するような力の宿る、清らかな魁夷の風景画が、私たちを心の内なる旅へと誘います。

 

東山魁夷《夕涼》(1968年)福田美術館蔵 通期展示
東山魁夷《夕涼》(1968年)福田美術館蔵 通期展示
東山魁夷《青きドナウ》(1971年)福田美術館蔵 通期展示
東山魁夷《青きドナウ》(1971年)福田美術館蔵 通期展示

東山魁夷《緑の園》(1970年)福田美術館蔵 通期展示
東山魁夷《緑の園》(1970年)福田美術館蔵 通期展示
東山魁夷《静けき朝》(1962年)福田美術館蔵 通期展示
東山魁夷《静けき朝》(1962年)福田美術館蔵 通期展示

 

 

第3章 東山魁夷と戦後日本画の色彩革命ー鮮やかさの革新

 

 第3章では、戦後日本画における色彩の変化に焦点を当て、東山魁夷と同時代の画家たちの作品をご紹介します。魁夷は全体の色調を統一させ、色を薄く何度も塗り重ねることにより奥行きのある色の世界を創り上げました。とりわけ彼の作品でしばしば用いられる青色は「東山ブルー」と呼ばれ、深みのある色彩で人々を魅了しています。魁夷だけでなく戦後の日本画家は、西洋絵画に負けない存在感ある画風を探究しました。

 戦後、日本画の画材は、それまで使用されていた鉱石を砕いてつくられる伝統的な岩絵の具に代わって、ガラスを使用した「新岩絵具」が開発され、色数が格段に増しました。色彩豊かな新岩絵具を意欲的に取り入れた結果、画家たちはより多彩な表現を追求するようになりました。

 魁夷の晩年の作品《緑の朝》ではあ、静けさと深い思索が込められた青と緑の世界が広がります。魁夷と同じく日本画に新しい潮流をもたらした小野竹喬、奥田元宋、加山又造などの画家たちもまた、鮮やかな色彩と新しい技法を駆使し、独自の色の世界を生み出しました。

 ここではそれぞれの画家が創造した色彩に注目し、彼らが到達した風景画の違いをご覧いただけます。

 

東山魁夷《緑の朝》(1991年)福田美術館蔵 通期展示
東山魁夷《緑の朝》(1991年)福田美術館蔵 通期展示

 

 

【展覧会概要】

 

企画展名:「東山魁夷と風景画の旅‐日本から世界へ‐」

会  期:2025年2月1日(土)~4月13日(日)

     前期:2月1日(土)~3月3日(月) 後期:3月5日(水)~4月13日(日)

開館時間:10:00~17:00(最終入館 16:30)

休  館  日:2月18日(火)、3月4日(火)

料  金:一般 1,500円(1,400円)

     高校生 900円(800円)

     小・中学生 500円(400円)

     ※( )内は20名以上の団体料金

     ※障がい者と介添人1名まで各900円(800円)

     ※幼児無料

  <嵯峨嵐山文華館両館共通券>

     一般・大学生:2,300円

     高校生:1,300円

     小中学生:750円

     障がい者と介添人1名まで:1,300円

主  催:福田美術館

後  援:京都府、京都市、京都市教育委員会